今回はゼンハイザーのHD650をレビューします。
本機はハイエンドヘッドホンのベンチマークとも言われる名機で、2004年の発売以降、現在は後継機HD660Sが2017年11月に発売していますが、まだまだハイエンドヘッドホンの定番として現役です。
フラットなサウンドを得意とするゼンハイザーらしい音で、派手さはないものの非常にバランスの良い音質です。フラットとながら退屈な音というわけではなく広い音場と圧倒的な解像度で、原音忠実ながら音楽をワンランク上に装飾してくれるといった印象です。
色々なヘッドホンのレビューしてきましたが音質は素晴らしいの一言です。
本記事内で同社のベストセラーHD598との比較もしててますのでご覧ください。
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下記記事でこのヘッドホンを含む、各社のハイエンドヘッドホンの違いについてを徹底比較しています。興味ありましたらこちらもどうぞ!
【なにが違う?】二~三万円以上のハイエンドヘッドホン5選徹底比較【レビュー】
ゼンハイザー HD650 製品スペック・外観レビュー
メーカ | Sennheiser ゼンハイザー |
---|---|
タイプ | ダイナミック開放型 |
重量 | 約260g |
インピーダンス | 300Ω |
コード長 | 3.0m両出しコード(着脱可) |
参考価格 | 49800円 |


ハイエンドヘッドホンだけあり専用の収納ケースがあります。銀にSennheiserのロゴが素敵です。開けるとこんな感じで、付属品はマニュアルとケーブル、変換アダプタです。
製品の外観はハウジングの側面がすべてメッシュになっており、独特なドライバ形状が外から見えるのが素敵です。遮音性は無く音漏れはしますが室内用のヘッドホンなのでそこは割り切る機種です。
発売から15年以上経ちますが、質実剛健なデザインは古さを感じさせません。
重量は約260gと、重たくなりがちなハイエンドヘッドホンとしては比較的軽量で、HD598の250gから10gほどしか増えていません。ハイエンドヘッドホンながら気負わず気軽に装着できるのが素晴らしいです。
注意すべきはインピーダンスで、300Ωとかなり高いです。(参考HD598:50Ω)さすがにこのヘッドホンをポータブルプレーヤーにつなぐ人はいないとは思いますが、鳴らすにはヘッドホンアンプが欲しいです。

またHD650はコードはLとR側の両出しタイプで着脱可能です。ケーブルを交換し音質向上させる「リケーブル」に対応しています。筆者的にはホントにケーブルの変更で音がそこまで変わるのか?懐疑的ですが、試してみないことには判断できないので、後日リケーブルを試して追記予定です!
ゼンハイザー HD650 5段階音質レビュー
音質 :★★★★★
装着感:★★★★☆
遮音性:★☆☆☆☆
音の傾向:フラット
得意な音楽:万能
音場感(音の広がり):○
音質については目が覚めるような音質で、文句なしの5点満点です。音のバランスはフラットですが、持ち前の高解像度で程よく出る低音と、繊細な高音が両立しており、非常に情報量の多い音楽を楽しめます。
感覚としては原音忠実ながら元の音楽を装飾している感覚です。ゼンハイザーのヘッドホンはHD598シリーズのように重心が低めで耳障りの良い音(ウォーム系)のイメージですが、本機はどちらかというと音の明瞭さ、クリアさが感じられ、中々刺激があります。
分解能、解像度も素晴らしく、筆者が良く聞くジャズ・フュージョンなどでは、サックス等の生楽器の音の振動を明確に感じられます。
ヘッドホンレビューの際にはジャンルごとにいつも同じ曲を聴いていますが、細かいところでこんな音も鳴っていたかという再発見があったりします。(特に打ち込み系などで顕著)
モニターヘッドホン的情報量の多さと、リスニングヘッドホンの広い音場や快適な装着感を良い所取りをしているような印象です。
一方このレベルのヘッドホンともなると音質は元の音源にかなり左右されます。低ビットレートなmp3や録音状態が良くない音源は一発で分かってしまうので音源の粗が気になるのが贅沢な悩みです。
向いている音楽は、なんでもOKの万能型ですが、特にクラシック・ジャズのような楽器の生音の表現に優れます。
他の方のレビューではロック等には不向きというという意見もありますが、基本的にフラットな特性かつ、低音もしっかり出るのでどんな音楽も高いレベルで聞けるというのが筆者の意見です。
音質については正直言うことは無いのですが、しいて言うならば音場感はミドルクラスの開放型ヘッドホンに対しては別格というほどの差は感じられませんでした。(とは言え十分音場感は良好です)
これ以上はもうHD800クラスのような超大型ヘッドホンの領域になってくるものと思われます。(さすがにHD800には中々手を出せませんが、正直欲しくなってきてます。。)
(装着感について)
ヘッドバンドの長さは当然調整可能で、イヤーカップ形状は装着感に定評があるHD598シリーズと近しい形状で、耳へのフィット感は抜群です。
ただHD598シリーズと比べるとHD650はやや側圧が強めと言われており、HD598は優しく側頭部に乗るような感じですが、HD650は多少側頭部に側圧を感じます。(その分フィットする感はあります)
ゼンハイザーのヘッドホンは欧米人の縦に長い顔にフィットする形状になっていると聞いたことがあるので、これが理由かもしれません。ただ側圧は感じるものの装着感は決して悪くないです。
また重量についてはハイエンドヘッドホンは300g超の重めの機種が多いですが、HD650は軽量(260g)なので気合を入れずに気軽に装着できるのが良いです。また、個人的に重要な所として眼鏡で長時間視聴しても辛くないのも◎です。
(HD598シリーズとの比較)
本記事を書く上でHD598とHD650で同じ音楽を聴き比べてみました。同じ音楽をHD650を聴いた後HD598で聞くと明らかに音の情報量が減っていると感じてしまうほど差がありました。
HD598も十分良いヘッドホンなのですが、聞き比べると明確に差異を感じたことに筆者自身驚きました。
まずは解像度で、HD598ですらやや音の輪郭がボケているように感じられるほどHD650の高い解像度が際立ちました。音の密度感が段違いという感じです。
また音の特徴も異なっており、HD598は暖色系のウォームで耳障りの良い音に対し、HD650はやや寒色系の明瞭で切れの良い傾向のサウンドです。
音場感については元々HD598が広いこともありそこまで劇的な違いはありませんでしたが、やはりHD650のほうがより音に立体感があります。
音の密度感や一つ一つの音の切れはHD650が勝りますが、どちらかというとHD650の方がやや聞き疲れする音です。(HD650自体そこまで聞き疲れしませんがあくまでHD598と比較した場合の話です)
解像度、音場感はHD650の圧勝ですが、HD598の方が聴き疲れしない分まったり聞けるヘッドホンで長時間リラックスして音楽を聞く分には一応HD598にも分がある感じです。
総評:HD650の良い点、悪い点
良い点
- 目が覚める高音質。ミドルクラスのヘッドホンから確実にランクアップできる
- 音質も癖が無くフラットなので、どんな音楽も高レベルな音質で視聴できる
- ハイエンドヘッドホンとしては軽量で快適なつけ心地
悪い点
- 側圧がやや強めで締め付け感あり(人により)
- インピーダンスが高く、ヘッドホンアンプが必須
総評はやはりミドルクラスのヘッドホンとは格が違う印象で、当サイトはダメなところはダメと言うのが信条ですが、正直素晴らしいとしか言えないヘッドホンでした。
フラットでバランスのいい特性も相まって2004年の発売以降長い間ハイエンドヘッドホンのベンチマークになったのも納得です。ヘッドホン沼の一つのゴール(始まりとも言う)として音に拘るオーディオファンにおすすめのヘッドホンです!
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